※これは私の場合のお話です。いろいろな耳の形の人がいるので、必ずしも全員が全く同じ手術になるわけではないです。少しでも参考になれば幸いです。
みなさんは「耳を作る手術」と聞いて、どういうイメージを持ちますか?
「作る?どういうこと?」ってなかなか想像しづらいですよね。
幼い頃の私は、すでに作られた耳を取り付けるだけだと思っていました!
むしろ、いつか生えてくる!ぐらいにしか考えておりませんでした。…なんてお気楽だったんでしょ(笑)
今回は、そんな「耳の手術」についてお話します!
手術をすることになったきっかけ
突然ですが、自分の耳たぶを触ったことはありますか?
ぷにぷにしていて、なんだか気持ちいいんですよね!
私は右耳が耳たぶしかなかったのですが、赤ちゃんの頃からその小さな耳をよく触っていたそうです。(今でも癖でよく耳は触っちゃいます笑)
幼稚園の頃までは、その「小さな耳」のことを特別気にしたことはありませんでした。
あれ?みんなと違う。
どうしよう、見られるのが怖い。
そんな気持ちが少しずつ芽生え始めたのは、小学生になってからでした。
そして同時に、片耳がないことによる”生活の不便さ”にも気付くようになりました。
例えば、「マスクがかけられない」「めがねがかけられない」
そんな困りごとが、日常の中でじわじわと現れてきたのです。
当時の両親も、きっと私が気にしていることに気付いていたと思います。
口には出さなかったけれど、私の未来を私以上に真剣に考えてくれていたのでしょう。
もちろん、手術をしなくても生活はできます。
でも、小さな私に代わって、両親は”未来の私のために”手術を受けるという選択をしてくれました。
そして私は「耳の再建手術」を受けることになったのです。
「耳を作る手術」って何をするの?
とても簡単にいうと、自分の軟骨と皮膚を使って、耳の形を作る手術です。
軟骨は肋骨あたり、皮膚は片側のそけい部(太ももの付け根)から取りました。そのため、私のお腹とそけい部には手術の痕があります。ちなみに、そけい部の傷はほぼ見えません。
まぁ、これは頑張った勲章ってことです!(笑)
取った軟骨で耳の立体的な形を作り、足りない皮膚を移植するのですが、
耳ってものすごく複雑な構造なんです。
触るとわかりますが、くぼみや膨らみがたくさんありますよね。
私は生まれつき耳たぶしかなかったので、耳を作る過程も何段階にも分かれていました。
もちろんこれを一度の手術で仕上げるのは不可能!
ここからが、長~い手術とのお付き合いの始まりでした。 早く解放してぇ~!
余談(顎のゆがみを治す手術について)
「小耳症」は、耳の形だけの問題と思われがちですが、耳の周囲の骨やあごにも影響が出ることがあります。
私の場合、片側のあごの骨が短いため、口元が少しゆがんで見えます。
そこで、提案されたのが「あごの骨を伸ばす手術」でした。
その内容は
- 短いあごの骨を切って、少し離す
- 離した骨と骨にボルト(ねじ)を1ヵ所ずつ装着
- 毎日数ミリずつボルトを回して、じわじわ骨を広げていく
というものです。
骨には、少し隙間が空くと自然に修復しようとする性質があるんだそうです。
この”骨の自己修復力”を利用して、時間をかけて骨を伸していくわけです。
もちろん、一気にはできないため、ボルトをつけた状態で約2ヶ月間過ごす必要があるとのことでした。
さらに、ボルトを取り付ける手術と外す手術の、計2回が必要でした。
すでに複数回の耳の手術を受けていた私にとって、また2ヶ月もボルトをつけたまま生活するのは想像がつかず、正直かなり不安でした。
両親は、私の気持ちを第一に考えてくれていたので、最終的にはこの手術は選びませんでした。
たまに、「あの時やっていたらどうなっていたかな?」と考えることはありますが…
今は、こんな私のことを「かわいい」と言ってくれる夫に出会えたので、もうあんまり気にならなくなりました!←突然の惚気すみません!(笑)
何回やるの?
手術は覚えている限り、
全身麻酔:4回、部分麻酔:1回、合計5回はおこなっています。
…いや、多すぎない!?って自分でも思います(笑)
調べてみましたが、現在は2回ほどで終わる病院もあるようですね。
医療の進歩ってすごい!
手術の流れ
- お腹の軟骨をとって、耳の部分に移植
- 皮膚にくっついていた耳を”立てる”
- 耳の形を立体的にする
- 耳の形の修正や微調整
- さらに細かい微調整
この、耳の複雑な形を調整するのが難しくて、何回にも分けて手術しました。
「耳を作る」って、かなり手が込んでいるんですね!
そして、「え、耳を作ったのなら聞こえるようになったんじゃないの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
実は、私は耳の穴は開けていません。…というより、開けることができませんでした。
神経や骨の位置関係の問題で、手術のリスクが高いと判断されたためです。
手術時間はどのぐらい?
1番最初の手術が圧倒的に長かったです!
麻酔をかけてから完全に覚めるまで、8時間ほどかかりました。
もちろん私はずっと寝ていたので、「長かったな~」なんて実感は特になし(笑)
でも、家族はずっとドキドキしながら待っていたそうです。そりゃそうですよね…。
それ以降の手術は、2~3時間ほどに短くなりました。
その頃には家族もだいぶ慣れていて、私が目を覚ますと
「はい、お疲れ~!」と、まるでスポーツの後みたいなテンションで迎えてくれていたのを覚えています。
慣れって怖い!!(笑)
入院期間はどのぐらい?
初めての手術では、約3週間の入院でした。
それ以降の手術は、だいたい1~2週間くらいの入院で済みました。
数字だけで見ると「そんなに長くないじゃん」と思うかもしれませんが、実際に入院すると本っっ当に退屈!
1日で飽きます(笑)
あまりにも暇すぎて、同じ手術をした同年代の子と一緒に、こっそり病院内を探検したことも…。看護師さんに見つからないように、明け方にこっそりそーっと。(あのときの看護師さん、ご心配をおかけして本当にごめんなさい!)
また入院期間については、学校を休まないように、基本的に夏休みに合わせて入院していました。
何歳からできるの?
これも人によるのかもしれませんが、私は小学4年生(10歳頃)から手術を始めました。
あまりに早いと、骨がまだ成長途中のため移植が難しいそうです。
10歳くらいになると、ある程度骨の成長が落ち着くため、手術が可能になるそうです。
こうして私は、小学生の多感な時期に、夏休みの一部を毎年病室で過ごすことになるのでした。
手術の前と後の様子
「手術」っていう響きだけで、なんだか怖く感じますよね。私もそうでした。
何度も経験しましたが、あの手術室独特の空気には、最後まで慣れることはありませんでした。
少しでも安心できるように、好きな音楽をかけてもらうことができました。
でも、手術室に入ると、聞きたかったはずのモーニング娘。の曲でさえ、耳に入ってこないほど緊張していたのを覚えています(笑)
気付けば手術は終わっていて、少しの気持ち悪さと、耳やお腹の傷の違和感がやってきます。
待っていてくれたお母さんの、ほっとした表情を見て、やっと「あ、終わったんだ」って実感していました。
手術当日は、麻酔が抜けきらず、ほとんど寝ていた記憶しかありません。
私の場合は、麻酔の副作用で気持ち悪くなってしまうことが多く、何度も吐いてしまったこともありました。子どもの頃は、この吐き気が1番つらかったです。
術後しばらくは傷口が腫れていましたが、徐々に腫れが引いてくると、ちゃんと”耳っぽい”形になっていて、お母さんと一緒に「おぉ~!」って感動したのを今でもよく覚えています(笑)
当時は、気持ち悪くなるし痛いし、夏休みの貴重な日が潰れるしで、手術に対してマイナスなイメージばかりでした。
でも、大人になった今は、「手術をして本当によかった」と心から思っています。
それは、耳ができたからだけではなく、このたくさんの手術を通して
あたたかい人、意地悪な人、楽しい人、気づきをくれる人など
いろいろな人に出会って、自分自身が成長できた
からです。
そして、”看護師になる”という夢も、この経験がなければ生まれなかったと思います。
同じような境遇のお子さんやその周囲の方々へ
手術はたしかに大変でした。
でも、それは決して無駄にはなりません。
むしろ、「あのとき頑張った自分」は、とっても誇らしい存在です!
人より痛みや苦しみを知っているからこそ、誰かの支えになれることもあります。
私が前向きでいられたのは、耳のことを”特別扱い”しないで、いつも普通に接してくれた家族や友達がいたからです。
もはや、私が片耳なことも忘れているんじゃないかと思うレベルです(笑)
気にしていたのは自分だけだったのかも…と思えるようになってから、心がふっと軽くなりました。
手術前も、「頑張れ!」と励まされた記憶はあまりなく、
「終わったらいっぱい遊ぼうね!」「どこに行きたい?」など、手術の先にある未来の話をたくさんしてくれていた気がします。
これから手術を控えている方は、不安や緊張でいっぱいかもしれません。
でも、これだけは言わせてください。
今これを読んでいるあなたは、もうすでに十分頑張っている人です!
大丈夫、耳は、なんとかなります。
あとは、人生を楽しむだけ!

ひとこと
もし分かりづらいところがあったら、コメントやお問い合わせからお気軽に教えてください。覚えている範囲にはなりますが、できる限りお答えしますね!
今度は、入院中の話やこの耳との付き合い方などもお話できたらと思います。
よかったらまた、読みに来てくださいね!
ここまで読んでくださってありがとうございました!
ではまた!失礼します!